膝関節センター
概念・理念
日本は世界でも屈指の長寿国であり、高齢化社会でもあります。高齢化に伴い関節の痛みを有する患者さんが増加しており、その中でも膝関節の痛みを訴えて整形外科を受診される患者さんが増加しています。膝関節痛の主な原因疾患は変形性膝関節症で、変形性膝関節症とは関節の軟骨が長年の使用により徐々にすり減ることで痛みや変形を生じるようになった状態のことです。初期の変形性膝関節症に対しては鎮痛剤や関節内注射、装具、リハビリテーションなどの保存療法で痛みをコントロールできますが、変形が進行しますと保存療法では効果が得られず、骨切り術や人工関節置換術などの手術療法が必要になります。現在日本では人工膝関節置換術を受ける患者さんが年間約9万人おられ、年々増加傾向にあります。人工関節が長期間にわたりゆるむことなく機能するためには専門医が手術を行う必要があります。その専門施設としてこの度平成30年9月より高の原中央病院に膝関節センターを開設しました。
特徴
当センターでの治療を行うにあたり、まずは正しい診断が必要です。加齢によると思われる膝の痛みからスポーツや事故などによる外傷をきっかけとする膝の痛みに対して入念に診察した上でレントゲンやCT、MRIなどによる画像診断を行います。これらの診察と検査を行った結果、保存療法が可能であるのか手術療法が望ましいのかを決定させていただきます。膝の痛みでお困りの方は是非当センターにご相談ください。
当センターでの治療対象となる疾患のうち最も多いのは変形性膝関節症でありますが、治療の基本は前述しましたような保存療法です。しかし保存療法にも限界があり、保存療法を行っても痛みが軽快しない場合は手術療法が必要となります。手術療法には主に骨切り術と人工関節置換術がありますが、年齢や関節変形の程度によってどの手術方法が最適であるのかを患者さまに提案した上で決定させていただきます。人工関節置換術におきましても部分的に置換した方がいいのか(いわゆる片側置換術)全部置換した方がいいのかを検討した上で説明させていただきます。
当センターでの手術療法が必要となった場合、医師だけでなく看護師、理学療法士、薬剤師等多くの病院スタッフが一丸となってケアを行うことで患者さまをサポートさせていただきます。また当センターは急性期病棟だけでなく、リハビリテーションを専門に行う回復期病棟を有しており、手術後の急性期が過ぎた後は早期退院も可能ではありますが、回復期病棟に転棟しての集中的なリハビリテーションを行うことも可能であります。
また手術室にはクリーン度100レベルのクリーンルームがあり、人工関節置換術をクリーンルームで行うことにより術後感染を予防するように努めております。人工関節置換術を行うにあたっては人工関節の専門医が術前計画を行い、より正確なインプラントの設置が可能となるように最新式の簡易型ポータブルナビゲーションを導入しております。
センター長ご挨拶
日本は高齢化社会であり、年々平均寿命が延びて今や人生100年時代と言われております。しかし平均寿命が延びれば延びるほど膝や股関節などの痛みに悩まされる期間が長くなります。加齢による関節痛の主な原因疾患は変形性膝関節症で、現在日本では自覚症状のある変形性膝関節症の患者さんは約1000万人、潜在的な患者さん(レントゲン診断による)は約3000万人いると推定されております。たくさんの方が膝関節の痛みに悩まされている現状を踏まえて、この度当院に膝関節センターを開設しました。 当センターでは膝関節痛でお悩みの方はもちろんのこと、他の病院で変形性膝関節症と診断されて保存療法をしてもらっているものの効果が得られない方、手術を勧められたものの本当に手術をした方がいいのかどうか悩んでおられる方も是非ご相談いただければと思っております。当センターを受診していただいた方によりよい医療を提供し、痛みのない生活を提供できるように努めていきたいと思います。 |
膝関節センター センター長
石本 佳之