多発性骨髄腫QandA

.多発性骨髄腫はどんな病気ですか?

A.はしかなどのワクチンを接種すると抗体ができますが、それらの抗体を作る細胞を形質細胞と呼びます。

形質細胞は主に骨髄に分布して、集塊を作る傾向があります。形質細胞ががん化したものが多発性骨髄腫です。

.健康診断でMたんぱく血症と言われました。Mたんぱくって何でしょうか、多発性骨髄腫ではMたんぱくがみられると聞きましたが私は多発性骨髄腫でしょうか?

A.まったく同じ抗体がたくさん作られるとき、たんぱく電気泳動法という検査でピークを認めるようになります。その抗体をMたんぱくと呼びます。

1つの形質細胞は1種類の抗体しか作りませんので、同じ抗体が大量に作られるのは、ある特定の形質細胞がたくさん増えたことを表します。まれに膠原病などで腫瘍性でないMたんぱくがみられることがありますが、ほとんどのMたんぱくは腫瘍性に増殖した形質細胞に由来します。ただ、少量のMたんぱくを作るだけでは体への悪影響はありませんので、Mたんぱくがあるからと言って病気とは言えません。

血液のがんである多発性骨髄腫と診断するためには、Mたんぱくの量が基準を超える、骨髄中に形質細胞性腫瘍を認める、骨髄腫細胞に由来する臓器障害がある、のいずれかが必要です。すべてを満たさない場合、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUSと略します)と呼びます。

MGUSは形質細胞の良性腫瘍と考えてよいでしょう。ただし、MGUSの方は、1年に1%の割合で多発性骨髄腫やALアミロイドーシスという血液がんになります。若い方であれば深刻な問題ですが、高齢者にとってはさほど深刻な問題ではありません。

.Mたんぱく量が基準値を超えて多発性骨髄腫と言われましたが、しばらく経過観察をするといわれました。血液がんなのにほっておいてよいのでしょうか?

A.Mたんぱく量や骨髄中の形質細胞比率が基準値を超えた場合多発性骨髄腫と診断されますが、Mたんぱく以外に異常所見がなければ無症候性骨髄腫と呼ばれます。

一方、Mたんぱく量によらず、放置していては生命の危険があるような症状を呈したものを症候性骨髄腫と呼びます。MGUSと比べ無症候性骨髄腫は、症候性骨髄腫になるリスクははるかに高いのですが、無症候性の時期に治療を始めることでその後の予後がよくなることは確かめられておりません。

したがって何らかの症状が出るか危険な兆候が見られるまでは慎重に経過観察を行います。

.症候性骨髄腫の症候とは何ですか?

A.以前から骨からカルシウムが溶け出すことにより起こる高カルシウム血症、大量のMたんぱくによって生じる腎機能障害、骨髄腫細胞が骨髄を充満することで起こる貧血、骨が溶けることで起こる骨痛もしくは病的骨折の4つが骨髄腫の代表的な徴候とされ、それぞれの英語のイニシャルを取ってCRABと言われてきました。

CRABを呈し、骨髄に形質細胞腫が確認されたものが症候性骨髄腫です。

最近ではCRABを起こしてからでは遅いとの考えから、CRABを起こす確率の高いいくつかの指標を満たしたとき症候性骨髄腫に準じて治療を始めることが推奨されています。

.多発性骨髄腫はなおりますか

A.症候性骨髄腫であった患者さんが治療によってMGUSの状態に戻ることはあります。

また、治療によりMたんぱくや骨髄腫細胞が消失することを完全寛解と呼びますが、長期間完全寛解が続くことはあります。しかし、大多数の患者さんでその後多発性骨髄腫の再発がみられます。

多発性骨髄腫が治ったと思われる患者さんはごく少数おられますが、治癒を治療目標におくことは現在のところ困難です。

.症候性骨髄腫の最初の治療はどのようなものですか?

A.病的骨折や骨腫瘍に対して外科的処置や放射線治療を行うことはありますが、基本は抗がん剤治療(化学療法)です。

65-70歳以下で、大量化学療法を安全に行える患者さんにはボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメサゾンの併用療法後メルファラン大量療法を行います。その後は再発がみられるまでレナリドミドを服用します。

大量化学療法が困難な患者さんにはいろいろな治療選択肢がありますが、その一つにダラツムマブ、レナリドミド、デキサメサゾンの併用療法を長期間継続するものがあります。