再生不良性貧血QandA

再生不良性貧血

.再生不良性貧血とはどのような病気ですか?

A.白血球、赤血球、血小板を含む血液細胞は、胎児の時期から死ぬまで造血幹細胞から作られます。造血幹細胞の多くは骨の中にある骨髄でおとなしく眠っていますが、一部の細胞が造血前駆細胞へと分化します。造血前駆細胞は盛んに細胞分裂を行うとともに、各種の血球へと分化します。

その結果、1日当たり赤血球は2000億個、白血球は1000億個も作られています。再生不良性貧血は造血幹細胞の量が減り、造血前駆細胞も少なくなることで血液細胞が不足する病気です。

造血幹細胞の量が減る原因として、薬剤、放射線被ばく等が考えられますが、実際にはこのような原因によるものはまれで、ほとんどは造血幹細胞が自らのTリンパ球により破壊されることで生じます。なぜTリンパ球が造血幹細胞を障害するようになるのか、詳しいことはまだよくわかっていません。

.再生不良性貧血ではどのような症状がみられますか?

A.各血球が減ることによる症状がみられます。

赤血球が減ると、階段や坂道を上った時などに、息切れや動悸といった貧血症状がみられます。ちなみに、立ち眩みやふわふわする浮遊感も日常的には「貧血」と呼ばれますが、それらは赤血球が少ないための症状ではなく、脳に行く血液が減ることによって生じる「脳貧血」の症状です。

血小板が減ることで全身の皮膚の紫斑や、鼻出血、口腔内血腫などの出血症状を認めます。

白血球が減ると細菌などの病原体に対する抵抗力が低下し、皮膚や腸管に常在する細菌によっても重症の感染症が起きることがあります。

再生不良性貧血では、他の血球と比較して血小板減少が強く見られる特徴があります。比較的軽症の再生不良性貧血では、血小板減少は強いものの、貧血や好中球減少は見られないか軽度で、特発性血小板減少性紫斑病などの病気と間違われることもあります。

.再生不良性貧血はどのように治療するのですか?

A.造血幹細胞を障害しているTリンパ球を標的とした免疫抑制療法と、減少した造血幹細胞を増やす効果のある薬物治療の併用が行われます。

免疫抑制療法としては抗胸腺グロブリン(ATG)とシクロスポリンがそれぞれ単独もしくは併用で用いられます。

造血幹細胞を増やす目的ではトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)を用いますが、軽症例にはたんぱく同化ステロイド剤も有効です。
重症例ではATGとシクロスポリン、さらにTPO-RAの併用が行われますが、ATG治療後には血小板減少や好中球減少の一時的な悪化を認めることから、数週間の入院が必要となります。

その他、TPO-RAは胎児に悪影響があり、若年女性への投与は注意が必要です。
造血が全く認められない超重症例や、ATG治療に反応しない重症例などでは、同種造血幹細胞移植が行われます。

.再生不良性貧血は治りますか?

A.免疫抑制療法などの薬物治療のみの場合、血液所見が完全に正常化する確率は高くありませんが、多くの患者さんは日常生活に支障のない程度までに回復します。

しかし、シクロスポリンやTPO-RAといった薬物治療を中止できない方も見られます。薬物治療では十分な改善が得られず、輸血療法に頼らざるを得ない状態が続く場合には、同種造血幹細胞移植を検討します。

最近では重症例を含めて90%以上の方が長期生存できるようになりました。

.再生不良性貧血がよくなっても別の病気になることがあると聞きました?

A.造血幹細胞の増殖を促すことで、造血幹細胞に遺伝子異常を生じやすくなります。

また、免疫抑制療法をおこなうことで、異常を生じた造血幹細胞を免疫の力で排除することが困難になります。

その結果、免疫抑制療法がよく効いた患者さんの一部で、発作性夜間血色素尿症という病気が起こります。この病気では夜間などに血管内で赤血球が壊されて、血尿や黄疸がみられます。また、倦怠感や体のあちこちの痛み、腎機能障害なども起きます。

発作性夜間血色素尿症とは別に、遺伝子異常を生じた造血幹細胞ががん化して、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病を起こす危険も健常人に比べ高くなりますので、病気がよくなっても長期の経過観察が必要です。