骨髄異形成症候群QandA

再生不良性貧血

.骨髄異形成症候群とはどんな病気ですか?

A.白血球、赤血球、血小板を含む血液細胞は、胎児の時期から死ぬまで造血幹細胞から作られ続けています。造血幹細胞の遺伝子に変異が起こると、血液細胞をスムーズに作れなくなることがあります。

そのような造血能の低下した造血幹細胞が増え、正常の造血幹細胞が駆逐されていくと、血液細胞が不足するようになります。

不足した血液細胞を補うため、骨髄内での造血は盛んになりますが、血球の分化が思うようにいかず、成熟血球に至る割合は低く(これを無効造血と呼びます)、成熟したとしても多くの血球は正常とは異なった形態をとります(これを異形成とよびます)。

造血幹細胞に生じた遺伝子異常の結果、血球形態の異形成と無効造血を伴って血球減少を起こす病態が骨髄異形成症候群で、本疾患は血液がんに含まれます。

血液細胞を作るのに欠かせない栄養素である葉酸、ビタミンB12、銅などが不足した場合や、大量のアルコール摂取や一部の薬剤によって生じる造血障害においても、血球形態の異形成と無効造血所見は見られます。

このように、骨髄異形成症候群の診断においては、鑑別が必要な良性疾患があることを念頭に置く必要があります。確定診断のために遺伝子変異解析が必要となる場合も少なくありません。

.骨髄異形成症候群はどうして血液がんなのですか?

A.骨髄異形成症候群は急性骨髄性白血病に進展する可能性が高い病気です。

白血病に移行する危険は患者ごとに異なりますが、おおよそ30%の患者が白血病になるといわれています。

また、血球減少の原因は造血幹細胞自体にあり、造血幹細胞を正常化させることは現時点では不可能です。異常な造血幹細胞が増えることによって生じた病気で、高い確率で急性骨髄性白血病になることから、骨髄異形成症候群は血液がんとみなされるようになりました。

.骨髄異形成症候群になる原因は何ですか、遺伝しますか?

A.骨髄異形成症候群の原因は遺伝子異常であり、老化と密接に関連しています。

世界中の民族で発症頻度に大きな差は見られないことから、遺伝的要素や環境因子の関与は低いと考えられています。

最近になって、家系内に複数の血液がん患者がいる家系の調査により、特定の遺伝子の多型性が骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病の発症に密接に関連することがわかってきました。発症年齢は様々で、60歳以上での発症も稀ではありません。

骨髄異形成症候群になりやすい家系は確かにありますが、大多数の患者においては遺伝性の要素は確認されていません。

.骨髄異形成症候群はどのように治療するのですか?

A.異常な造血幹細胞を正常化することはできませんが、他人の正常な造血幹細胞と入れ替えることでこの病気を治すことができます。
この治療法を同種造血幹細胞移植(以下同種移植)と呼び、骨髄異形成症候群に対する唯一の根本治療法です。

しかし、同種移植は患者さんに対する負担が大きく、生命の危険を伴う重篤な有害事象も多発することから、すべての患者を対象とはできません。

まずは、染色体異常の種類と、骨髄もしくは末梢血での芽球比率などをもとに、急性骨髄性白血病になる危険性を判断します。
白血病に移行する危険性が高く、同種移植に耐えられると判断されればドナーを探して同種移植を行います。
芽球が徐々に増えており、白血病に近づきつつある状態の患者にはアザシチジンという抗がん剤で、白血病になるのを遅らせる治療を行います。
白血病になる危険は低いと判断されれば、対症療法としての輸血療法やエリスロポエチンなどの造血刺激剤投与を行います。