糖尿病性神経障害について | 高の原中央病院
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2023.02.01
糖尿病性神経障害について
糖尿病の合併症
糖尿病には色々な合併症があることが知られています。
「し」「め」「じ」という表現をお聞きになられたことはありますか。
をそれぞれ指しています。
糖尿病の方に特有とされるこれらの「合併症」は、細い血管の障害です。
糖尿病の悪い状態が長く続くと起こってくるのですが、ご自身ではっきりと自覚症状があるものばかりではないため、定期的な検査を行い、異常を発見する必要があります。日ごろからご自身の体調管理を行い、いつもと変わったことがないか、もし何か気になることがあれば、主治医に相談してください。
糖尿病の合併症に多い”神経障害”
特に、「し」、糖尿病性神経障害は最も多い合併症の1つですが、決まった症状がありません。
診察した結果と合わせて総合的に診断する必要がありますので、何だか気になるな、と感じた症状は主治医に相談してください。典型例では 1→2→3 と進みます。
1.趾や足底から左右対称性に症状が現れる
2.次第に足首や下腿などに障害が進み、「手袋と靴下をはいたような」状態となる
3.さらに悪化し、前胸部にも感覚低下が生じ、「胸当てをつけたような」感覚障害が加わる
糖尿病性神経障害は足先から始まることが多いのですが、全身に症状が出ます。
急に眼が動かなくなる、というように脳梗塞と見分けがつかない場合もあります。汗が止まらない、ある
いは、汗が全く出ない、胃腸の動きが悪くなって、消化不良のような気がする、便秘がちだ、下痢をする…こんな症状も、糖尿病性神経障害のせいで起こることがあります。
ところが、実際に脳梗塞の場合もあり、腰の障害や、血管の病気が見つかる場合もあります。
検査をすると、大腸がんが見つかった、という方も珍しくありません。
特に、糖尿病の方は膵臓、肝臓、大腸のがんが糖尿病の無い方と比べて多く見つかる傾向にありますので、市区町村や会社から案内のあるがん検診は積極的に受けるようにしてください。
神経障害とは異なり、目の合併症(網膜症)や腎臓の合併症(腎障害)は自覚症状はほとんどありませんので、定期的な眼科受診や血液検査、尿検査を通して、早い段階で異常を見つけ、悪化を防ぐことが大切です。
糖尿病性神経障害の治療
検査や通院は、大変ですが、どうぞ続けてください。では、糖尿病性神経障害はどうやって治療するのでしょうか。
1. 血糖コントロールの改善
2. 血圧・脂質の管理や生活指導(喫煙、飲酒など)
3. 痛みに対する治療(薬物療法)
痛みに対しては、近年有効性と安全性の高い薬剤の登場や、抗うつ薬を安全に用いることで以前と比べるとずいぶん改善を実感する方が増えました。薬は改善すれば、減らしたり、中止できる場合もあります。
症状を相談したら薬を増やされるのではないか、と心配な方もいらっしゃると思いますが、薬を使ったほうが良いかどうかも含めて、まずは一緒に相談しましょう。
痛みがひどくて辛抱できない!という時を「10」、全然痛くなくて快適だ、という時を「0」として、ご自分で今はどのくらいだろうか、と考えてみてください。スケジュール帳や血圧、血糖値の記録のそばにメモしていただくと役立ちますので、お試しください。
神経障害の話をすると、必ず「足」の話をします。
それは、足から症状が始まる方が多いためですが、以前は糖尿病のために足を失った方が多かったためでもあります。感覚が鈍くなり、あれ、おかしいな? と思って久しぶりに見てみると足の指が真っ黒になっていた、そんなことが時々ありました。
足を守るためには、異常を早く見つけて早く治すことしかありません。
ある日突然足の指が真っ黒になる、ということはありません。
始まりは小さな傷です。やけど、小石を踏んで切ってしまった、靴ずれをそのままにしておいた、など。靴はあなたの足にぴったりでしょうか?
異常を早く見つけるために、足の裏、指の間は必ず、ご自分で毎日見てください。
石鹸の泡を立てて、ご自分の手で直接優しくぬるま湯で洗いましょう。ゴシゴシとブラシや軽石でこすらないようにしてください。
最近、気になる症状はありませんか。気になったら、まずはご相談ください。
高の原中央病院 総合診療科・内科
医長 鈴木 智子